近視は なぜ 進むのか

近視(近眼)について

正常な眼が、どうして近視になるのか。そして近視になったあとも、なぜ度が進むのか。この疑問には、200年以上前から数多くの研究がなされていますが、いまだに最終的な正解が出ていません。近視の発生予防、近視の進行防止は、国家的な課題でもあります。それでも、少しずつ新しい知識が加わっています。
人種の差というのは、どうしようもないことです。日本人に近視が多いことは間違いありません。通常は、小学校高学年から高校生までの学童で発症します。また親が近視であると、近視の程度が強いというエビデンスがあります。成人になると近視はもう進行しない、ということではなく、20歳代、30歳代で眼鏡を作り替えることがあります。
小児の眼球は成人の眼球と同じではなく、身体の成長とともに成人の眼球へと変化していきます。近視の眼球は、前後方向に伸びた球形を示します。これを眼軸延長と言います。程度の強い近視(強度近視と呼びます)では、この眼球の変形が著しく、網膜の性能が悪くなり、また眼球のまわりの骨容器(眼窩)とぶつかって、両目で見た物が二重になる(複視)現象が現れることがあります。小児の眼球が成長していくときに、近視の眼球になりにくくするにはどうしたらよいか、が近視予防の要点です。
成人と異なり、小児の眼球は大きな調節幅を持っています。簡単に言いますと、遠くの物体からごく近くの物体まで、瞬時にピントを合わせる力を持っています。この力は老化とともに失われ、老人では遠距離用、パソコン画面用、近距離用、の眼鏡をかけ替えなければ細かいところまで読み取れません。ピントを合わせる、という動作は、網膜に投影された像が明瞭なのか、ぼやけているのか、を瞬時に判断して微調整することです。視力検査をしていると分かりますが、視力の良い児童は指標の向きをすぐに正しく答えます。裸眼視力が低下してくると、答えるまでに時間がかかります。それでもしばらく5m先の視力表を見ていると、反応が速くなってきます。眼は常に遠く近く、上下左右の物体を見て調節を繰り返していますので、ここに疲労や、像のボケに対する反応の低下があると、近視が進行すると考えられています。近くを見るという作業は、眼球が調節をたくさん行うということですから、遠くを見て眼を休ませる時間を多くとると、近視が進行しにくい、というエビデンスは理にかなっています。
遠くがはっきり見える眼鏡をかけると、本を読んだり文字を書くときに、近くを見る努力が必要となり、近視が進行するから少し弱い度数の眼鏡を作ったほうがよい、と言われた時期がありました。現在は、老眼鏡と同じように累進レンズを加えると、近視進行防止に効果があるとエビデンスが出されています。もっとも細かく物を判別するのは、網膜の中心部である黄斑部中心窩ですが、中心ではない周辺部網膜に映る像のボケが近視の発生・進行に重要な役割を果たすという最新の学説が有力となっています。近視の眼球は、球形ではなく、眼軸が延長した形に変形していますので、黄斑部中心窩にピントを合わせた眼鏡では、周辺部網膜にピントが合いません。もう少し研究が進むと、学童近視の概念および治療は大きく変わると考えられます。
また、角膜の中央部をへこませることにより、眼球の屈折度が減少して近視が軽くなる、という治療がオルソケラトロジーです。これは、特殊なコンタクトレンズを夜間装用して眠ると、翌日近視が軽くなるという治療法で、学童の近視進行を抑制するエビデンスが出されています。
日本眼科医会が発行している「日本の眼科」2013年8号では、親が近視、都市の住人、近業作業が長いことが近視の進行と疫学的に相関する、と記載しています。逆にスポーツ等の屋外活動が多いと近視が進みにくい、と述べています。軸外収差抑制眼鏡は、全方向に累進加入度を持つ眼鏡で、近視の進行を抑制する効果が確認され、現在、日本眼科医会の補助を得て、多施設研究が始まっている、と書いています。