近視を予防する時代 が やってきた

世界の人口の 半数が近視になる という予測

パソコン、スマートフォンをはじめとするデジタルデバイスの普及により、数十センチメートルの距離にある画面を長時間にわたり、見続ける生活が普通になりました。最近では、小学生、中学生に各人1台のタブレット端末を貸与して、デジタルデバイスの操作、プログラムの教育が学校で行われる時代になりました(GIGAスクール構想)。さらに、2020年から地球規模で流行した新型コロナにより、外出する機会が減少しました。近視を示す学童の割合は、急速に増加しており、このままのペースで進むと、2050年には世界の人口の半数が近視になるという予測も出ています。この危機感は、実は家庭にテレビが普及した昭和30年代、40年代にもあった話で、テレビの前に長時間すわり続けて画面を見る児童が近視になり、テレビから離れて見る、続けて見ないこと、と指導がされました。

視力回復センター の 絶滅

近視になった子供の視力を回復させたい、という多くの親の願いから、昭和40年代、街には視力回復センター、近視治療センターがいたるところにできました。そこで行われていたのは、老眼鏡と同じ凸レンズめがねを購入させる、視力表を繰り返し読ませる、ことでした。そして、その結果は、明らかな効果は認められず、かえって視力を悪化させてしまうことも多く、社会的に問題となり、絶滅しました。しかし、凸レンズによって近視を予防するという考えは、今日に続いています。

近視予防 の 歴史

遠方を見るときには、水晶体は薄く、毛様体筋がゆるんでいる状態で、目は楽です。近くを見ると、一瞬ぼやけた後に、毛様体筋が力んで収縮し、水晶体を厚くして、ピントを合わせます。目には力が入ります。そこで、近くを見続けないこと、目を休めること、屋外で元気に遊ぶこと、が提唱され、加えて、睡眠中に毛様体筋を休ませる点眼薬、超音波治療器で毛様体筋をほぐす、近視眼鏡の凸レンズを組み込む、という医学治療が行われました。しかし、効果が出る方、出ない方があり、明瞭な効果は出ませんでした。親が近視だから、遺伝は仕方がない、という諦めが広まりました。

この 20年間の 進歩

明らかな効果(エビデンス)が次々と発表され、近視予防の治療が進歩したのは、この20年間です。近くを見たときに、網膜に映る像は、遠方を見たときよりも、網膜の後ろに結びます。この像のずれが、眼球の形を近視(前後方向に延長する)に進ませる、近視の度数を悪化させる、という考えに立って、像を後ろではなく、前に結ぶようにして、近視を抑制する、というものです。凸レンズを使うのですが、以前とは違って、砂粒のように小さな凸レンズ粒を眼鏡レンズに多数装着します。また、睡眠中に、角膜を変形して、角膜の凸レンズ度数を増やします。これとは別に、アトロピンという薬剤をきわめて低濃度にして、点眼します。

かなりの 出費になります

残念なことに、健康保険証を使った診療では最新の近視予防治療は受けられません。横浜駅の近くにある診療所が金額をホームページで提示していますので、「マイオピン  スカイビル」 「オルソケラトロジー  スカイビル」でネット検索すると、情報を得ることができます。近視進行を抑制する効果がもっとも高いものは、オルソケラトロジーとマイオピンの併用療法である、と現時点では考えられています。

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