飛蚊症(硝子体混濁)

目の前を虫が横切って飛ぶように感じる症状です

視野の中心付近から耳の方向にかけての範囲に、水草のようにゆっくり漂う、小さな黒い点や糸くず、小さな泡の集まりのような異質な物体を感じることがあります。目の前に蚊が飛んできたのかな、と錯覚することが多いので、飛蚊症( ひぶんしょう と読みます )と言われます。
眼球の中心部は透明な液体(硝子体)で満たされていて、そもそもは濁りが無くきれいに透き通っているのですが、中年以降になると、わずかな濁りが出てきます。瞳孔から眼球内部に入ってきた光が、この濁りを弱い影として網膜に投影しますので、黒っぽい影として自覚するというのが飛蚊症のメカニズムです。
このように飛蚊症は、加齢にともなう害の無い状態なのですが、まれに、網膜剥離の自覚症状として現れる場合があるので、注意が必要です。怖い網膜剥離と、害の無い硝子体混濁を見分けるポイントは、網膜剥離では、日に日に症状が強くなるのに対して、飛蚊症では突然異質な物体を感じますが、翌日以降、症状が進まない点です。
とは言っても、飛蚊症は気になる症状ですので、受診して散瞳検査( 瞳孔を開く薬剤を点眼して、網膜の隅々まで点検する )を受けることをお奨めします。また、別の話になりますが、飛蚊症をきっかけに初診して、白内障や緑内障、黄斑変性、ドライアイが見つかることもよくあります。飛蚊症は、突然症状が現れますが、数週間をかけてゆっくり消えていきます( 軽くなって気にならなくなります )。
できれば、初診したその日に散瞳検査をする方が、受診日数の節約になります。ただし、瞳孔を開く点眼をすると、6時間ほどいつもと違う見え方になって苦労することがありますので、その点、ご注意くださいます様、お願いいたします。